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最高裁判所第二小法廷 昭和45年(オ)1170号 判決 1973年10月05日

主文

理由

上告代理人後藤信夫、同遠藤光男、同後藤徳司の上告理由第一点について。

本訴は、被上告人が上告人らに対し原判決添付別紙物件目録記載の土地所有権にもとづき同記載の建物収去土地明渡および土地不法占拠による損害金の支払を求めるものであるところ、東武信用金庫(以下「参加人」という。)が昭和四一年一月二四日原審に「当事者参加の申出」と題する書面を提出し、上告人らおよび被上告人に対し訴を提起したが、その後参加人において適法に訴の変更および訴の一部取下をした結果、所論参加申出の取下書が原審に提出された時点における参加訴訟の請求の趣旨は、(1)被上告人に対しては、(イ)前記目録(一)記載の建物およびその敷地二六五坪五についての被上告人の上告人らに対する(所有権にもとづく)建物収去土地明渡の請求を棄却する、(ロ)参加人が右土地二六五坪五につき賃借権を有することを確認する、(ハ)右建物につき参加人が有している仮登記にもとづく代物弁済による所有権移転登記手続に同意せよ、との判決を求めるというのであり、(2)上告人らに対しては、右(1)、(ロ)同旨の判決を求めるというのであつて、その請求原因は、参加人は右建物をその敷地の賃借権とともに上告人ら先代関根信義から代物弁済により譲り受けたというのである。そして、右参加の趣旨、原因に照らすと、参加人が本訴の目的の全部もしくは一部を自己の権利として主張するものでないことは明らかであり、一件記録に徴しても、参加人が本訴の結果により権利を害せられるべきものと認めることができないから、本件参加は、すくなくとも所論参加申出の取下書が提出された時点においては、民訴法七一条にもとづく当事者参加ではないと認めるのが相当である。

してみると、参加人のした所論参加申出取下につき上告人らが同意していないとしても、それは、参加人と上告人ら間の訴につき取下の効果が発生しないというだけのことであつて、参加人を除外し上告人らおよび被上告人に対しなされた原判決に所論の違法をきたすものではないということができる。引用の判例は本件に適切でなく、論旨は採用することができない。

同第二点ないし同第四点について。

東京都が公園を廃止したのちにおいては、上告人ら先代関根信義は、同人が東京都から公園地使用許可をえた三一五坪五合(以下「本件土地」という。)につき土地所有者たる被上告人に対抗しうる正当な使用権原を有しない旨の原審判断は、その適法に確定した事実関係に照らし正当として是認することができる。してみれば、違憲の主張は前提を欠き、また、右使用許可にもとづく使用権が私法上の権利たるの性質を有するか否かは原判決の結論に影響するものではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の認定しない事実にもとづいて原判決を非難するものであつて、採用することができない。

同第五点について。

所論主張の事実を認めることができない旨の原審判断は、原審で取り調べられた証拠関係および原判決の説示に照らし、是認することができ、原判決に所論の違法はない。引用の判例は、本件に適切でなく、論旨は採用することができない。

同第六点について。

所論に関する原審の判断は、その適法に確定した事実関係に照らし正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審が認定しない事実にもとづいて原判決を非難するにすぎず、採用することはできない。

同第七点について。

原判決は、地番、地積、家屋番号、建物の表示、床面積等によつて土地および建物を特定しているのであつて、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

(裁判長裁判官 大塚喜一郎 裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄 裁判官 吉田 豊)

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